2022.12.02 (更新日:2022.12.28)
【北方ジャーナル事件】過激な月刊誌の行く末やいかに
(最大判昭61.6.11)
とある月刊誌が知事選候補者に有る事無い事好き勝手書いた挙句、差し止め請求成立後訴えたら返り討ちになった話。
検閲が絶対禁止と言われる理由がわかるようになります。
1.登場人物
原告:北方ジャーナル
- 1972年
- 創刊。有限会社ReStudio。現在も運営してる北海道の人気月刊誌。
今でも運営してるローカルメディアで、創刊から7年で今回の事件を起こします。
当時は、過激な記事を書くことから、あらゆる方面から注目を浴びる、今でいう炎上商法のような販売戦略があったようです。
最高裁まで発展する事件を起こしてから、こんにちまで36年続けてますので、根強い人気、需要のある月刊誌なんでしょうね。
被告:国、元旭川市長五十嵐広三さん
- 1963年
- 37歳で旭川市長に当選し、12年務める。
旭川市は、人口30万人の大きな自治体です。
そこで12年も任期を務めた五十嵐さんは、かなり信頼度の高い人物だった事が伺えます。
市長に当選する前は、実業家であり、北海道民芸店の社長でもありました。
やり手実業家であり、ハイキャリアという面もあり、敵に回したくないタイプの一人だと思います。
2.事件詳細
- 1979年
- 事の発端である北方ジャーナルが、北海道知事選挙に立候補を予定していた元旭川市長である被告Iに対し、名誉棄損の記事を書いた。
記事の内容は、
タイトル「ある権力主義者の誘惑」
「嘘と、ハッタリと、カンニングの巧みな少年」
「言葉の魔術者であり、インチキ製品を叩き売っている(政治的な)大道ヤシ」
「ゴキブリ共」などと書かれ、全体として、北海道知事にふさわしくないという内容だった。
Iさん:北方ジャーナルの記事は名誉棄損だ!名誉侵害の予防の為、事前差し止めを要求する!
- 1979年
- 元旭川市長の被告Iは、札幌地方裁判所に当該号の出版の差し止めを求める仮処分を申請し、同日認められた。
北方ジャーナル:差し止めが認められただと?この判決はおかしい!もう印刷もしたんだぞ!国とI氏を損害賠償で訴えてやる!
北方ジャーナルは、この差し止めが検閲であり違法であるとして国と五十嵐さんに損害賠償を請求。
けんえつ【検閲】とは、しらべあらためること。特に、種々の形で行われる思想発表の内容・表現を、公の機関が強権的に取り調べること。
- 1980年7月16日
- 【一審】
札幌地方裁判所
【結果】
原告の敗訴。
【主文】
原告の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
ということで、控訴。
- 1981年3月26日
- 【二審】
札幌高等裁判所
【結果】
原告の敗訴。
【主文】
本件控訴をいずれも棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
原告側が上告。
- 1986年6月11日
- 【最高裁判所大法廷】
【結果】
原告の敗訴。
【主文】
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
【結論】
出版物の印刷等仮処分による事前差し止めは憲法21条の検閲に当たらない。
名誉侵害が認められ、加害行為として差し止めを求めることができるとした。
3.その他
4.まとめと例題
- 憲法13条 幸福追求の権利
- 憲法21条2項 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
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- 例題
事前抑制と検閲は原則禁止であるが、厳格な要件の下、例外的に許される。
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事前抑制はその通りだが、検閲は絶対禁止である。
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