2022.12.06 (更新日:2022.12.12)
【レペタ法廷メモ訴訟】日本の司法を変えたアメリカ人
(最大判平元.3.8)
レペタ氏が傍聴席でメモを取る許可を取ろうとしたら拒否されたので訴訟したら負けた話。
レペタさん率いる弁護士たちが、日本の窮屈な裁判傍聴の有り方を変えた
1.登場人物
原告:ローレンス・レペタ
被告:国、法務大臣 林田悠紀夫
- 林田 悠紀夫
- 日本の政治家。自由民主党参議院議員や京都府知事を務めた。綾部市名誉市民。正三位勲一等旭日大綬章。
2.事件詳細
レペタさんとは、日本の司法の考え方を変えた凄い人なんです。
当時の裁判では負けてしまうんですけど、レペタさんが投じた一石は、それまでの日本の司法の凝り固まった考え方にヒビを入れることができました。
- 1987年
-
レペタさんは、研究のため、所得税法違反事件の傍聴を行っていた。
「メモを取る許可願」を裁判所に7回求めたが意味不明な理由で認められなかった。
これに対して、精神的損害を被ったとして、国家賠償請求訴訟を提訴した。
レペタさんの理論武装の内容は4点
1,憲法14条1 法の下の平等について
レペタ:記者クラブにメモを許可して、個人に許可されないのは、憲法14条法の下の平等に違反している。
2,憲法21条1 表現の自由について
レペタ:知る権利が内包されている憲法21条1表現の自由を侵害している。取材の自由、情報収集の権利も保障されている。メモを取らないと、内容を正しく伝えられないじゃないか!
3,憲法82条1 裁判の公開について
レペタ:公判の内容を伝えられないなんだから、憲法82条1裁判の公開に違反している。
4,国家賠償法について
結果的に研究も阻害、多大の精神的損害も被った。国家賠償法により、メモを拒否した東京地方裁判所の裁判長に損害を賠償する義務がある。
果たして、法廷でメモを取る自由は保障されるのか?裁判が始まりました。
そもそもなぜメモすら許されないのか?
公安関係の事件が多発し、荒れる法廷が日常。円滑な進行を図るために裁判所でのメモを禁止にせざるをなかった。
レペタ訴訟開幕
- 1987年2月12日(昭和62年)
- 【一審】
東京地方裁判所
【結果】
敗訴
【主文】
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
- 1987年12月25日(昭和62年)
- 【二審】
東京高等裁判所
【結果】
敗訴
【主文】
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。
- 1989年3月8日(平成元年)
- 【最高裁判所大法廷】
【結果】
敗訴
【主文】
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
【結論】
1、憲法82条1 裁判の公開について
裁判長:傍聴する自由を与えるが、権利として要求できることを認めたものではない。
裁判長:法廷警察権や執るべき措置についての裁判長の判断は、最大限に尊重されなければならない。
違法性を認めず上告を棄却した。
つまり、メモを取る自由は認められなかった。
レペタさんの精神的損害も認められなかった。
法廷警察権とは?
法廷における秩序を維持するために、裁判官に与えられている強制力を行使する権利。 必要と認めるときは警察官の派出を要求することもできる。
2、憲法21条1 表現の自由について
裁判長:さまざまな意見、知識、情報を摂取する補助としてなされる限り、筆記行為の自由は、憲法21条1規定の精神に照らして、尊重されるべきである。
また、その見聞する裁判を認識、記憶するためのものである限り尊重に値し、故なく妨げられるものではない。
裁判長:しかし、他人とトラブルになった場合や公共を優先する場合など、一定の合意的制限を受けることは已む得ない。
法廷警察権も最大限に尊重されなければならない。
3、憲法14条1 法の下の平等と国家賠償法について
裁判長:裁判長の措置が、法廷警察権の目的、範囲を著しく逸脱し、不当であるという事情がない限り、記者クラブのメモを許容し、個人に禁止する行為は、国家賠償法の違法な公権力の行使とは言えない。
ところが・・・
その後、一斉に各裁判所に通知され、即日メモの自由が認められた。
3.書籍
4.まとめと例題
関連条文
- 憲法82条1 裁判の公開
裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。
- 憲法21条1 表現の自由
集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
- 憲法14条1 法の下の平等
すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
point
試験に出てくる言い回し
尊重はするが、権利として認められたものではない。
- 例題
法廷警察権の行使は、裁判長の広範な裁量に委ねられ、その行使の要否、執るべき措置についての裁判長の判断は、最大限に尊重されなければならない。
-
○
その通りである。
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