「付加価値を提供しています」と言う人を、私は信用しない|価値を決めるのはお客さん

同じ店が二つ並び、客が感じのいい店長のほうへ歩いていく

先に結論を書きます。 あくまで私個人の意見ですが、「我々は付加価値を提供している」という言葉を使いがちな人ほど、私は信用しません。価値を決めるのは、営業マンでも士業の先生でもなく、お客さんだと思っているからです。だから私は「価値を提供しています」とは言いません。言うなら「何をするか」だけです。

これは不動産業界でよく聞く言葉の話です。でも、不動産だけの話ではありません。行政書士の先生も、私自身も、気をつけたほうがいいと思っている話です。

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10件案内して、9件はただ働きの世界

9件を案内した営業マンと、最後の1件だけ案内した営業マン

不動産の仲介手数料には、上限があります。よく言われる「3%+6万円」に消費税、というあれです。この上限を満額もらうために「我々は価値を提供しております」と言う。それ以外の言い方を、私はちょっと知りません。

内覧は、基本的に無料です。内覧でお金を取る業者はいません。

家を探す人が10件見に行くとき、10件とも同じ業者とは限りません。9件を案内した営業マンと、1件だけ案内した営業マンがいたとします。その1件で即決したら、評価されるのは1件の営業マンだけで、仲介手数料を全部総取りです。9件案内した営業マンは、ただ働き。

9件案内した人に、価値はなかったのか。ありました。でも、誰も払わない。 そういう世界です。だから仲介の仕事での「価値を提供している」は、満額をもらうための言い方にしかなっていないと、私は思っています。

行政書士に置き換えると

いくつもの無料相談を回ったあと、一人の先生の前に座る相談者

行政書士に置き換えます。無料相談の範囲で10人の先生を回り、1人の受け答えがすごく良くて、やってくれそうだったから、その先生に決めた。

あるいは、いちばん安いところに決めた。その場合、価値は何もありません。ただ安かった、それだけです。

「報酬を高くして、価値を提供する」という言い方もよく聞きます。でも本音は、高く取りたいだけ。物価が上がっている、自分の仕事の値段も上げたい。それは当然分かりますし、私もそうしたいです。

他の先生よりちゃんとやる、ミスがない。その意味の価値なら分かります。 でも、差がないのに、何が価値なんですか、と。

一つだけ同意できるところがあります。行政書士は、士業の中では単価が低めの世界です。単価を上げたい、には大賛成です。

ただ、不動産には「3%」という強い武器があります。法律で上限が決まっているので、言いやすい。行政書士の報酬は、法律で決まっていません。 自分で決めて、事務所に掲示します(行政書士法10条の2で、事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示する義務があります)。だから士業は「価値提供」が言いにくい。だからこそ、あの言葉は余計にうさんくさく聞こえるんです。

私も不動産の立場で、司法書士や土地家屋調査士に見積もりを取ります。見るのは金額です。お客さんに「こちらが安くて、こちらが高いですね」と見せて、お客さんが安いほうにすると言えば、安いほうに連絡して終わり。そんなものです。「他より早く登記します」「早く図面を作ります」は、決済が迫っている人には価値ですが、別に早くなくていいというお客さんもいます。誰にでも効くセールストークは存在しないと思っています。

同じ言葉でも、言う人で価値が変わる

尊敬する先輩の話は聞けるが、そうでない上司の説教には腹が立つ

この続きは、後編の動画でも話しています。

同じコンビニが二つ並んでいます。同じ看板、同じ商品、同じ値段。違うのは店長だけ。どちらに行きますか。好きな店長のほう、あるいは好きな店員さんがいるほうだと思います。提供しているサービスは完全に同じ。選んでいる理由は、価値ではなく好きか嫌いかです。

不動産の仲介も同じです。物件も、契約書も、手数料の上限も同じ。それでもお客さんがどこを選ぶかは、「この人が好きか」だと私は思っています。

こういう話をすると「バカだなお前」と言ってくる上司がいると思います。私は、そういう上司に当たったことがほとんどありません。父が不動産業者で、私は不動産会社に勤めたことがありません。居酒屋で店長を8年やり、不動産の営業は15年。不動産業のかたわら、指定管理の仕事もしていました。不動産業は、自分でやったり父に聞いたりの、完全に独学です。

ただ、想像はつきます。自分より仕事ができる先輩に言われたら、言い方が雑でも「愛のむちだ」と思える。でも、明らかに自分より結果を出していない人に「価値提供とはな」と説教されたら、腹が立ちます。正直に言うと、聞く耳を持てません。

お客さんも同じだと思います。内覧に遅刻して謝りもしない営業マンが、最後に「弊社の仲介は他と違います、価値があります」と言っても、響かない。打てば響く、大好きな営業マンが同じことを言えば、聞きたくなる。同じ言葉なのに、言う人で価値が変わる。 だから、価値は言う側のものではなく、聞く側のものだと私は思っています。

だから私は「何をするか」だけを言う

事務所の壁の報酬表と、手順を説明している男性

これから開業する人へ。そして、集客がうまくいっていない私自身へ。

行政書士は報酬を自分で決めます。不動産のような便利な法定の上限はありません。だからなおさら、高い報酬の理由が欲しくて「うちのほうが付加価値が高いですから」と言いたくなる。でも、高い報酬に価値があるかを決めるのは、先生ではなく依頼者です。依頼者が「この金額の割に価値がある」と思ってくれたら、それが価値だと思います。

私は、こうしています。

  • 報酬表を出す
  • 理由を聞かれたら、何をするかを説明する
  • 自分から「価値が高い」とは言わない
  • 高いと思われたら、その人にとっては高い。それでいい

「価値を提供します」と言わない代わりに、「これをします」と言う。全員に効く魔法の言葉は持っていません。「価値提供」は、その持っていないものを持っているように見せる言葉だと思うので、使いません。お客さんの「好き」の側に触れられるかどうか。それだけだと思っています。

まとめ

  • 「付加価値を提供している」という言葉を使いがちな人ほど、私は信用しない(個人の意見)
  • 不動産の仲介は、9件案内してもただ働きの世界。「価値提供」は満額をもらうための言い方になっている
  • 行政書士の報酬は法律で決まっておらず、自分で決めて掲示する。だからこそ「価値が高い」は言い訳に聞こえやすい
  • 同じサービスでも、お客さんは「好きな人」を選ぶ。同じ言葉でも、言う人で価値が変わる
  • 価値を決めるのは営業マンでも先生でもなく、お客さん
  • だから私は「価値を提供します」ではなく「何をします」と言う

よくある質問

Q. 行政書士の報酬はどう決まっていますか? A. 法律で金額は決まっておらず、行政書士が自分で決めます。行政書士法10条の2で、事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示する義務があります。

Q. 他の事務所より報酬が高い理由を聞かれたら、どう答えますか? A. 私は「価値が高いから」とは言わず、何をするのかを説明します。そのうえで高いと思われたら、その方にとっては高いのだと受け止めます。

Q. 同じサービスなら、お客さんは何で選ぶと思いますか? A. 私は、価値よりも「この人が好きか」で選ばれていると思っています。同じ店が二つ並んでいたら、好きな店長のほうに行くのと同じです。

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