先に結論を書きます。 私は、宅建受験生のレベルは上がっていない、むしろ下がっている傾向にあると思っています。「無料で教えてくれるYouTuberが増えたから受験生のレベルが上がった」という見方には反対です。合格基準点は平均点で決まるのではなく、上位何パーセントに入るかという順位で決まる相対評価なので、平均点が上がったとしても、それだけで受験生全体の実力が上がったことにはなりません。合格基準点の高さを見るときは、その年の出題の難易度も一緒に見る必要があると思っています。
2025年1月の動画で、「宅建受験生のレベルは本当に上がっているのか」というテーマで話をしました。ある問いかけに対してあえて反対の意見をぶつける、というスタイルの動画です。当然、批判を前提にした内容になるので、賛否があれば教えてもらえればと思います。
「無料YouTuberが増えたから」で片づけていいのか

宅建受験生のレベルが上がっているという主張の根拠としてよく聞くのが、YouTubeやTikTok、Twitter、ブログなどで無料でわかりやすく教えてくれる人が増えたというものです。これがきっかけで年々受験生のレベルが上がっている、だから合格率が高いんだ、という理屈です。
ただ、私はこの理屈にそれほど説得力を感じていません。本試験のあとには、毎年のように「過去問も意味なかった」「今年の宅建は難しかった」という感想が出ます。逆に簡単だった年は「簡単だった」で片づけられます。合格発表のあとも同じで、合格基準点が高ければ「受験生のレベルが上がっているから」、低ければ「今回の試験が難しかったのに、それでも基準点はここまで来た」と言われます。私は複数年受験しているので分かるのですが、この言い方自体は昔から変わっていません。YouTuberが増えたからといって、受験生一人ひとりの得点にそれほど直結する話ではないと思っています。
複数年受験して分かった、受験生のレベルが一番高かった年

年度別で見たとき、本試験そのものが一番難しかったのは、宅建主任者から宅建士に呼び方が切り替わった年、記憶では2015年だと思います。この年の合格基準点は、かなり低かったはずです。
次に本試験が難しかったと感じているのが、2021年10月の試験です。2020年から2021年にかけては、密を避けるための措置で本試験が10月と12月の2回に分かれて実施された時期がありました。その中でも2021年10月の試験は、私が受験した年の中で一番難度が高かったと感じています。合格基準点は34点で、私はこの年、めちゃくちゃ勉強したにもかかわらず29点しか取れませんでした。当時は「大量記憶法」という勉強法を試していたのですが、これが完全に空振りだったからです。
本試験の難しさそのものではなく、受験生全体のレベルが一番高かった年という意味では、私はこの2021年10月が一番だったと思っています。
なぜその年は受験生のレベルが上がったのか

2020年から2021年にかけて受験生のレベルが上がったと考えている理由は、新型コロナウイルスの流行で多くの人の可処分時間が増えたからです。どこにも出かけられない分、学生をはじめとした多くの人が、家でゲームをするか勉強するかしかやることがない状況でした。勉強時間が強制的に増えた結果、この時期に受験生全体のレベルが押し上げられたのだと思います。
実は私自身は、この時期は逆に勉強時間を確保しづらい立場でした。当時、不動産業とは別にキャンプ場の運営もしていたのですが、コロナ禍でキャンプブームが起きて、キャンプ場のほうが忙しくなっていたからです。予約サイトもない小さなキャンプ場を一人で回していたので、電話対応から草刈り、トイレ掃除まで全部自分でやる必要がありました。その一方で、いつも通り不動産業のほうは暇だったので、忙しさが偏っていたのを覚えています。周りの受験生の勉強時間が増えていく中で、私自身は思うように時間を取れなかった年、という記憶です。
合格基準点が上がった=実力が上がった、ではない理由

2022年から2024年にかけては、受験生のレベルは下がってきていると思っています。2022年から2023年にかけては、コロナが明けた直後ということもあり、レベルが下がっているだろうというのは感覚的にも分かりやすいところです。
問題は2023年から2024年です。合格基準点は2023年が36点、2024年が37点と1点上がっているので、これだけ見ると「レベルが上がった」と言いたくなります。でも私は、本試験のレベルの割には37点という基準点は高すぎると感じました。
本試験の難易度を上げる方法の一つに、個数問題を増やすというやり方があります。個数問題が増えると、7〜8割正解できていた分野でも正答率が5割、ときには3割程度まで落ちることがあります。私の記憶では、宅建業法の個数問題は2023年が7問ほどだったのに対し、2024年は3問ほどに減っていたはずです。単純計算で半分以下です。権利関係の難易度はあまり変わらず、法令上の制限は少し難しくなった、五問免除の分野はむしろ簡単だったという声も聞きました。それだけ個数問題が減って本試験自体の難度が下がっている割には、合格基準点が37点まで上がったというのが、私の実感です。
合格基準点は「順位」で決まる
宅建の試験は、平均点で合否ラインが決まる仕組みではありません。上位何パーセントに入るかという相対評価で、これまでおおむね上位17%前後が合格の目安になっていると理解しています。平均点がどれだけ動いても、上位何パーセントという枠自体は変わりません。ですから、無料のYouTuberが増えて全体の平均点が多少押し上げられたとしても、合格基準点そのものが直接上がる理屈にはならないと思っています。
実際、2024年の合格率は18.6%でした。これまで18%を超えたことはなかったそうです。合格基準点を超えられるかどうかを分けるのは、動画を見て知識をインプットした量ではなく、問題を解いたアウトプットの量だというのが私の実感です。私自身、替え歌で語呂合わせを覚える教材にはとても助けられましたが、それ以外の解説動画はほとんど見ていません。それでも合格した年は41点を取れています。動画を見て理解した気になることと、実際に得点できることは別だと思っています。
まとめ
- 宅建受験生のレベルは上がっていない、むしろ下がっている傾向にあると考えています
- 無料YouTuberが増えたことと、受験生一人ひとりの得点の伸びは直結しないと思います
- 記憶では2015年が本試験として一番難しく、2021年10月は受験生全体のレベルが一番高かった年です
- コロナ禍で可処分時間が増えたことが、2021年前後のレベルの高さにつながったと考えています
- 合格基準点が上がっても、個数問題の数など出題の難易度が変わっていれば、実力上昇の証拠にはなりません
- 合格基準点は平均点ではなく順位で決まる相対評価です
- 合格ラインを超えるのに効くのはインプットよりアウトプットの量だと思っています
よくある質問
Q. 無料の解説動画が増えたことは、受験生にとって意味がないのですか? A. そんなことはありません。暗記の手助けや時間の効率化にはなると思います。ただ、それが直接受験生全体のレベルを底上げしていると言い切るのは違うと感じています。
Q. 合格基準点が上がれば、その年の受験生のレベルは上がったと考えていいのですか? A. 私はそう単純には考えていません。個数問題の数など、出題の難易度が変われば基準点も動くので、基準点の高さだけで実力上昇を判断するのは危ういと思います。
Q. 合格基準点を超えるために一番大事なことは何ですか? A. 私の実感では、動画を見て知識を入れるインプットよりも、問題を解くアウトプットの量です。
