合格体験記は、勉強法を探すために読むものではない|「3日で受かりました」の前に積み上がっていたもの

武勇伝を語る歴戦の助っ人と、聞き入る若い狩人

動画を流し見していると、「宅建、3日で受かりました」という題が出てきます。3日。寝ずにものすごい量をやったのかと期待して開くと、東大卒です、不動産鑑定士です、と続く。それなら先に言ってほしい、と思います。

行政書士試験でもあります。「2か月・200時間で240点」。どうやって勉強したのかと見てみると、もともと法律をかなり勉強してきた人だったりします。

嘘をついていると言いたいのではありません。本人は正直に話していて、その3日や2か月は真剣に勉強したのだと思います。ただ、その前に何が積み上がっていたのか。私が知りたかったのは、そこでした。

目次

本人が数える時間と、読む側が知りたい時間はずれている

同じ石段を、違う段から上り始める二人の狩人

本人は「この試験の対策を始めてから」の時間を数えています。読む側が知りたいのは「今の自分が、ここから始めて、どれくらいで受かるか」です。ここがかみ合っていません。

短期間で受かった話には、本当は「ただし書き」がいくつも付いています。

  • ただし、関係する知識をすでに持っている
  • ただし、試験勉強に慣れている
  • ただし、勉強の時間を十分に取れる

同じ2か月でも、毎日まとまった時間を使える人と、仕事と家のことを終えてから1時間を作る人では、条件が違います。時間を作るのも実力のうちだと私は思っていますが、作れる幅は人によって違います。

苦労して受かった人の話のほうが、つまずいた所が分かる

つまずいた場所を指して教える先輩

たとえば「過去問を3周しました」と言われても、解説の意味が最初から分かる人の3周と、解説に出てくる言葉から調べないといけない人の3周は、まったく違います。後の人は、1周目で止まっています。昨日覚えたはずのことを今日はもう忘れ、同じ所で何度も間違える。知りたいのは、そこをどうしたかです。

私は4回受けて、3回落ちました。

項目私の数字
受けた回数4回(3回不合格)
記述を除いた点数落ちた年142点、受かった年144点
教材に使ったお金1年目1万円 → 2年目7万円 → 3年目15万円 → 受かった年は新しい教材なし

落ちた年と受かった年の差は、記述を除けば2点です。苦労した側は、どこで止まったのか、何を変えたのかを数字で話せます。法律を初めて学ぶ人は初めて学んだ人の話を、仕事や家族と両立している人は近い条件の人の話を読むほうが、まねできるヒントがあると思います。

合格体験記は、やる気をもらうために読む

物語を読んで目を輝かせる猫の相棒

勉強のやる気は、上がっていくものではなく、下がっていくものだと思っています。いちばん高いのは「受けるぞ」と決めた時、次が教材を買った時。そこから本試験に向けて、だんだん下がります。

合格体験記は、その下がり方を止めるために読むものだと思います。「この人も苦しみながら受かったんだ」と思えたら、それで十分です。読み終わったら、自分の机に戻ります。

体験記を読んでいて安心するのは、受かった人の多くが、結局は地味に過去問を回しているところです。特別な裏技は出てきません。

社会人受験生がやらないほうがいい3つ

飾り立てた帳面より、使い込んだ的を指す教官
  1. きれいなノートを作る。色ペンで整理し、図や表を作り直す時間があるなら、過去問を1問でも多く解いたほうがいいです。思ったことは大きめの付箋に書いてテキストに貼り、1冊にまとめれば足ります
  2. 講義動画を何周も見る。講義動画は、真っ白なページへの下書きです。2倍速で、集中して1回見る。あとは過去問・テキスト・条文で何度も上書きしていきます
  3. 「まだ理解できていないから、過去問は早い」と言って問題に入らない。これがいちばん危ないと思います。準備のような勉強に逃げているうちに、時間がなくなります

最後に合格へ近づくのは、地味な作業のくり返しです。過去問を回す。テキストに戻る。六法を引く。大事な所を覚える。また過去問に戻る。

3日で受かった人がいるのに、2か月で240点を取る人がいるのに、と自分を責める必要はありません。その人の3日の前に、どれだけの積み重ねがあったのか。そこまで見ないと、比べることはできないからです。

この話を動画で見る

もとにした動画:「合格体験記、それ前提が違うだろ。「3日で受かりました」の3日前までの話【行政書士試験】」(YouTube・2026年10月1日)と「合格体験記を読んでも合格できない理由|社会人受験生は余計なことをするな」(YouTube・2026年6月5日)。

人と比べてしまうときの記事

目次