令和6年度の記述式、私は8点でした。そのうち行政法の1問は、被告適格を間違え、しかも「併合的」と書いてしまい、おそらく0点です。
きつかったのは、中身ではなく「誰を訴えるのか」という一番最初のところで落ちていたことでした。取消訴訟には、中身(違法かどうか)を見てもらう前に通らなければならない門があります。処分性(行政事件訴訟法3条2項)・原告適格(9条1項・2項)・訴えの利益(9条1項のかっこ書き)の三つです。その手前に、被告は処分をした行政庁ではなく、その行政庁が所属する国や公共団体(11条1項)という決まりがあります。
誰を訴えるのか=被告は「国・公共団体」(11条)

登場するのは三者です。
- 処分を受けた人
- 処分をした行政庁(例:知事)
- その行政庁が所属する国・県・市
条文は行政事件訴訟法11条1項。処分をした行政庁が国または公共団体に所属する場合、取消訴訟は、その行政庁の所属する国または公共団体を被告として提起しなければなりません。
つまり、訴える相手は処分をした行政庁ではなく、その行政庁が所属する国や県や市です。知事がした処分なら、被告は県です。
行政庁のほうは、11条4項で訴状に記載することになっています。被告ではなく、訴状に書く。
ここは、地方自治法の被告の定めと混同しやすいところです。それぞれの被告を見比べて、何がどう違うのか整理しておくことを強くすすめます。私は条文に書いてあるのに、記述で間違えました。
門の一つ目=処分性(3条2項)
被告を間違えなかったとしても、まだ入口に門があります。どれか一つでも通れないと、中身に入る前に門前払いです。違法かどうかを見てもらう前に終わってしまいます。
| 門 | 条文 | 見るところ |
|---|---|---|
| 処分性 | 3条2項 | 直接、国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する行為か(条文ではなく判例で決まる) |
| 原告適格 | 9条1項・2項 | 法律上の利益を有する者か。処分の相手方以外は「文言のみによることなく」判断する |
| 訴えの利益 | 9条1項のかっこ書き | 処分の効果がなくなった後でも、取消しによって回復すべき法律上の利益があるか |
一つ目は処分性。3条2項は「処分の取消しの訴え」を、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為……の取消しを求める訴訟」と定めています。
正直、読んでもよく分かりません。処分を説明するのに「処分」と書いてあるからです。ここは条文ではなく判例で決まっているところです。ざっくり言うと、直接、国民の権利義務を形成し、またはその範囲を確定する行為かどうかを見ます。
試験では、行政指導、通知、計画などが「処分に当たるか」という形で出てきます。いちばん大事なのは、処分性がないと言われたら、その先がないということ。どんなに中身がひどくても、見てもらえません。
門の二つ目=原告適格、三つ目=訴えの利益(9条)

二つ目は原告適格。9条1項で、取消訴訟は「法律上の利益を有する者に限り」提起できます。誰でも訴えられるわけではありません。
処分を受けた本人は、だいたい大丈夫です。揉めるのは処分の相手方ではない第三者。隣に建物が建つ、近所に施設ができる、そういう人に原告適格があるのか、という話です。
そこで9条2項。択一で狙われるところだと思います。
裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について……法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。
二回言います。文言のみによることなく。 文言だけで決めてはいけません。
三つ目は訴えの利益。これは独立した条文がなく、9条1項のかっこ書きの中にあります。
処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。
私は最初、かっこが長すぎて何を言っているのか分かりませんでした。要するに、処分の効き目がもう切れてしまっても、取り消してもらえば回復するものが残っているなら、訴えてよいということです。「もう終わったことだから訴えられない」という選択肢が出てきたら、このかっこ書きを思い出してください。
確認の3問
- 問1 処分の相手方以外の人の原告適格は、根拠法令の文言だけで判断してよい? → ×。 9条2項「文言のみによることなく」。趣旨・目的、利益の内容・性質も考慮する。
- 問2 処分の効果が期間の経過でなくなった後でも、取消しで回復すべき法律上の利益があれば、取消訴訟を提起できる? → ○。 9条1項のかっこ書き。
- 問3 処分をした行政庁が国に所属する場合、取消訴訟はその行政庁を被告として提起する? → ×。 被告は国(11条1項)。行政庁は訴状に記載する(11条4項)。
問3が、私が令和6年度に間違えたところです。
条文問題を落としている、ということは
LECの横溝先生は「行政法は13〜14問なら誰でも取れる。15問からが壁」と何度もおっしゃっています。
私は春のセルフチェック(25問)で、憲法と民法は11問中10問取れたのに、行政法は14問中6問でした。勉強時間の3割以上を行政法に使って、この結果です。そして落としていた中身の多くが、今回のような条文の問題でした。
条文問題を落としているということは、裏を返せば、条文を読む習慣をつければ解けるということです。まずは行政事件訴訟法の9条と11条、この2か条だけ開いてみてください。
この話を動画で見る
もとにした動画:「【行政書士・行政法】取消訴訟、入口で落ちる三つ|私は記述で被告を間違えて0点でした」(YouTube)。条文は e-Gov 法令検索で確認しました(行政事件訴訟法3条・9条・11条)。
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