クーリングオフは、契約した場所ではなく「申し込んだ場所」で決まる|宅建業法37条の2

喫茶店で申し込む人と、モデルルームで申し込む人

先に結論を書きます。 宅建業法のクーリングオフ(37条の2)は、買受けの申込みをした場所で決まります。事務所等以外の場所で申し込んだ人はクーリングオフでき、事務所等で申し込んで、事務所等以外で契約した人はできません。期間は書面で告げられた日から起算して8日(初日算入)。引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったときも終わります。撤回・解除は書面を発した時に効力が生じます。

https://www.youtube.com/watch?v=2FRUDnbSxpA

同じマンションを、同じ会社から買った人が2人います。

  • 1人は喫茶店で「これください」と申し込んだ
  • もう1人はモデルルームで申し込んだ(建物の中にあり、専任の宅建士がいる案内所)

契約書にハンコを押したのは、2人ともその会社の事務所。同じ日に、同じ机で。その後、2人とも「やっぱりやめます」と言い出しました。やめられるのはどちらでしょうか。「契約した場所が同じなんだから、どちらも同じ」と思った方は、ここが今回いちばん大事なところです。

目次

大前提=業者が売主で、買主が業者でないとき

業者が一般の買主に売る場面と、業者同士の取引

中身に入る前に、大前提を一つ。宅建業法には「8種制限」と呼ばれる規制があります(受験の世界での呼び方で、条文にこの言葉は出てきません)。

これがかかるのは、宅建業者が自ら売主になり、しかも買主が業者ではないときです。業者同士の取引には適用しない、と78条2項に書いてあります。

その8つの一つが、今回のクーリングオフ、37条の2です。見出しは「事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等」。長いですが、この見出しに答えが入っています。

「事務所等」とは何か(施行規則16条の5)

建物内の案内所、テントの案内所、買主が招いた自宅

「事務所等」は、法律ではなく施行規則16条の5に書いてあります。口で押さえておきたいのは三つです。

  1. 案内所や展示会は、土地に定着する建物内にあるものだけ。 だからテント張りの案内所は事務所等ではありません。(事務所以外で専任の宅建士を置くべき場所であることも条件です。)
  2. 売主が他の業者に代理や媒介を頼んだときは、頼まれた業者の事務所等も含まれます。
  3. いちばん引っかかるのがこれ。買主の方から「自宅(または勤務先)で説明を受けたい」と申し出た場合、その自宅や勤務先も事務所等になります。事務所ではないのに、事務所等になる。逆に、業者の方から押しかけた自宅は、事務所等になりません。

言い出したのがどちらかで、事務所等かどうかが変わります。ここが分かれ目です。

冒頭の話に戻ると、37条の2第1項にかっこ書きがあります。「事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主」は除く。

  • モデルルーム(事務所等)で申し込み、喫茶店で契約した人=できない
  • 喫茶店で申し込み、事務所で契約した人=できる

契約した場所ではありません。申し込んだ場所です。冒頭の2人なら、やめられるのは喫茶店で申し込んだ人です。

期間は8日(初日算入)。終わり方は2つ

最初のマスに書面を留め、8マス目で封筒をポストに入れる図

期間

  • 申込みの撤回等ができる旨と方法を告げられた日から起算して8日を経過したら、できなくなります(37条の2第1項1号)。
  • この「告げられた」は、口で言われただけではダメで、書面です。何を書くかは施行規則16条の6で決まっています。
  • 数え方は初日算入。告げられた日が1日目です。月曜に書面をもらったら、その月曜が1日目で、翌週の月曜が8日目。施行規則に「8日を経過する日までの間は」できると書いてあるので、8日目までは間に合います。

もう一つの終わり方

  • 引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払ったとき(37条の2第1項2号)。「かつ」です。引渡しだけでも終わらない。代金だけでも終わらない。 両方そろって初めて終わります。

そして、書面で告げられていなければ、8日はそもそも始まりません。 告知の書面をもらっていなければ、ずっとできます。ただし、引渡しと代金の全部の支払いがそろえば、そこで終わりです。

やり方と効果

  • 撤回・解除は書面で行います(1項)。
  • 効力は、申込者等が書面を発した時に生じます(2項)。届いた時ではありません。 8日目にポストに入れ、届いたのが10日目でも間に合っています。
  • 業者は、撤回等に伴う損害賠償や違約金を請求できません(1項後段)。
  • 業者は、受け取った手付金その他の金銭を速やかに返還しなければなりません(3項)。
  • これらに反する特約で申込者等に不利なものは無効(4項)。契約書に「クーリングオフは5日以内」と書いてあっても無効です。

確認の3問

引渡しは受けたが、代金はまだ半分の買主

3問とも、売主は宅建業者、買主は業者ではない前提です。

  • 問1 喫茶店で買受けの申込みをし、その後、売主の事務所で契約を結んだ。クーリングオフできる? → ○。 申し込んだ場所が喫茶店なのでできる。契約したのが事務所でも関係ない。
  • 問2 買主の方から「自宅で説明を聞きたい」と申し出て、その自宅で申込みをした。クーリングオフできる? → ×。 買主が申し出た自宅は事務所等(施行規則16条の5第2号)。業者の方から「伺います」と言った自宅なら○。
  • 問3 書面で告げられて3日目に引渡しを受けた。代金はまだ半分しか払っていない。クーリングオフできる? → ○。 引渡しと代金の全部、両方そろわないと終わらない。

問題文を読むとき、どこで契約したかに目が行きがちです。先に、どこで申し込んだかを探す。 これを癖にしてください。

余談ですが、私は実務でクーリングオフの説明をしたことがあります。売主業者の立場で、他に場所がなく、飲食店で申込みを受けたときです。そういう場所で申込みを受けるときは、この条文が頭をよぎります。

まとめ

  • クーリングオフ(37条の2)は、業者が自ら売主で、買主が業者でない取引に適用(78条2項)
  • 決め手は契約した場所ではなく申し込んだ場所。事務所等で申し込み、事務所等以外で契約した人はできない
  • 事務所等=事務所、土地に定着する建物内の案内所など、そして買主が申し出た自宅・勤務先(施行規則16条の5)
  • 期間は書面で告げられた日から起算して8日(初日算入)。書面がなければ始まらない
  • 引渡しを受け、かつ代金の全部を支払ったら終わり
  • 書面を発した時に効力。損害賠償・違約金は請求できず、手付金等は速やかに返還。不利な特約は無効

よくある質問

Q. 事務所で契約したら、クーリングオフはできませんか? A. 契約した場所ではなく、買受けの申込みをした場所で決まります。事務所等以外の場所で申し込んでいれば、事務所で契約していてもクーリングオフできます。

Q. 8日の数え方は? A. クーリングオフができる旨などを書面で告げられた日を1日目として数えます(初日算入)。8日を経過する日までの間は行えます。

Q. 8日目に書面を出して、業者に届いたのが10日目なら間に合いませんか? A. 撤回等の効力は、書面を発した時に生じます(37条の2第2項)。8日目に発していれば間に合います。

出典

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